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導入事例

『専門家のノウハウ』から『チームの能力』へ:AsiaInfo が AI 研究開発ツールを選ぶ3つの原則

成熟した ICT 企業が3年間かけて切り開いた、実際の AI 変革の道筋を紹介します。

私は AsiaInfo Technologies の Chief Architect、Zhu Jun です。 AsiaInfo は通信業界で30年以上の経験を持ち、約1万人の研究開発エンジニアがいます。この規模で「全社的な AI Coding」と言うと、目標よりスローガンのように聞こえます。しかし今年、私たちは実際に実現しました。現場のエンジニアからアーキテクトまで、ほぼ全員が日常業務で Agent と協働しています。 ここで共有するのは、体裁を整えたプレゼンテーションではありません。成熟した ICT 企業が3年間かけて進んできた、現実の AI 変革の道筋です。

以前の AsiaInfo の日常

通信事業者向けの BSS(Business Support System)と OSS(Operations Support System)プロジェクトは、AsiaInfo の事業ポートフォリオで大きな比重を占めています。 これらの IT システムには、2つの大きな特徴があります。 ● システムが極めて複雑:2G から5G まで、古いサービスが終了しないまま新しい要件が次々に追加され、1つの変更が全体へ波及します。 ● 知識が大量に蓄積:30年間のエンジニアリングノウハウが、ベテラン専門家の頭の中、同期されていない数百の文書、数百万行のレガシーコードに分散しています。 以前は、新入社員が1つのモジュールに慣れるだけで2〜3か月必要でした。 同時に、通信事業者は中核事業を強化しつつ第2の成長曲線を構築する、事業変革を進めています。そのサービスパートナーである AsiaInfo には、厳しい「効率向上」が求められます。 私たちは AI で生産関係を再編する必要がありました。

方向性を定める:AI Native はスローガンではない

2022年末に ChatGPT が登場した後、チーム内で真剣に議論しました。将来のアプリケーションソフトウェアはどのような姿になるのか、という問いです。 私たちの答えは、Cloud Native は必然的に AI Native へ進化する、というものでした。 この変化は3つの層で起こります。 ● インフラストラクチャの変化:コンテナ中心の PaaS から、大規模モデル中心の MaaS へ。 ● 開発パラダイムの変化:DevOps から AI Engineering へ。人間がコードを書く形から、人間がコードを書く Agent を指揮する形へ。 ● アプリケーションパラダイムの変化:SaaS から Agent へ。「業務オントロジー知識 + デジタルツイン + インテリジェント Agent」の3本柱で支えます。 方向性が明確になると、仕事のあらゆる細部に「AI First」を組み込みました。 最初は「基盤モデル + RAG」から始め、自社のコードと文書をシステムへ投入しました。その後 Qoder CN(旧 Tongyi Lingma)と Qoder を導入しました。機能の範囲は「コード補完」から、要件、設計、テスト、バグ修正へ段階的に拡大し、次第に完全な研究開発チームを形成しました。 この経験から、現在ツール選定に使用している3つの原則が生まれました。 ● 基盤モデルへの継続的な投資を見る:企業がソフトウェアエンジニアリングへ本当に資源を投入し、時間とともに反復速度を高めているか。これは、継続的にアップグレードできる車を購入しているかどうかを決めます。 ● 周辺エコシステムを見る:モデルだけでなく、組織、プロセス、標準に適合し、柔軟に設定できる必要があります。 ● セキュリティ基盤を見る:信頼できるモデルと実行環境は、通信事業者のような顧客にとって必須条件です。

30年の業界経験を専門家の頭から取り出す

最も難しいのは、コードを書くことではなく、知識を保存することです。 ベテラン専門家の経験と数十年前のコードロジックは、以前は1対1の指導で継承されていました。効率が悪く、持続可能でもありません。Agent を導入すると問題はさらに明確になりました。シリコンベースと炭素ベースの従業員が協働するには、Agent もシステムを「理解」する必要があります。 私たちは業務オントロジー知識を本格的に構造化し、人間と Agent の双方が読み、共通認識を得られる形式で保存しています。 ここで Qoder のナレッジエンジンが大きな効果を発揮しました。重要なのは「新しい RAG」ではなく、次の点です。 ● AI による抽出と保守:ベテランエンジニアがライブラリを手動で構築するのではなく、エンジンがコードベースから標準、API 資産、アーキテクチャの特徴を自動抽出し、日々の会話をナレッジカードへ変換します。 ● 知識に適した形式:長い文書を小さなカードに分割し、ハイブリッド検索と組み合わせることで、Agent は索引カードをめくるように必要な情報へすばやく到達できます。 ● リポジトリ単位の共有:ベテラン専門家がリポジトリへ知識を保存すると、チーム全体で共有できます。 ひと言で言えば、ベテラン専門家が知識を蓄積し、新入社員と Agent が一緒に共有・再利用します。

複雑な業務を分解し、多数の Agent で並列実行する

通信事業者のシステムに「小規模プロジェクト」はありません。ある事業者の医療プロジェクトを例にすると、フロントオフィス、バックオフィス、請求、カスタマーサービスがエンドツーエンドで接続され、31の省とグループ本社にまたがっています。 以前、このようなシステムは直列の研究開発リズムで動いていました。1か所を変更すると、全体をやり直す必要がありました。現在は次のように作業しています。 ● まずアーキテクトが全体の境界、モジュール分割、インターフェース契約を定義します。 ● Spec で制約と役割を明記します。たとえば「この Agent はローカライズだけを担当し、コードを変更しない」と定義します。 ● 複数の Agent が並行して進め、最後にアーキテクチャ層で再統合します。 このワークフローを最も磨き込んだのは、決定論的なバグ修正シナリオです。初期にはログとユーザーフィードバックをそのまま AI に渡していましたが、精度は低いままでした。その後、制約、専門家の経験、コードコンテキスト、アーキテクチャ知識、役割境界を重ねるにつれ、成功率が着実に向上しました。 人間による AI の制御は、監視するだけでは実現できません。制約と知識をワークフローへ何層にも組み込むことで実現します。

Agent で Agent を開発し、Agent で Agent を編成する

Qoder チーム自身の共有は、私に強い印象を残しました。 開発ペースは、9か月で60以上の外部リリースと130以上の内部バージョンを提供し、平均すると1〜2日に1つ新しいビルドを出しています。 なぜこれほど速いのでしょうか。Qoder は Qoder を使って構築されているからです。 ● プロダクトマネージャーがプロトタイプを描き、設計が直接コードへ反映されます。 ● 新機能は Spec モードで開発します。 ● バグが登録されると、環境とログを自動的にまとめて Agent へ渡し、Agent が自ら再現、修正、検証します。 ● 統合テストと回帰テストを含め、Agent に任せられるものはすべて任せます。 人間が担うのは、意思決定、方向付け、継続的な改善です。 ここから重要な示唆を得ました。AsiaInfo は現在「Agent のインターネット」を構築しています。私の Agent が私のために購入し、あなたの Agent があなたのために販売し、その背後には請求、プロトコル、信頼の新しい層があります。これはまったく新しいアプリケーションパラダイムであり、「自らを開発する」ほどの反復速度があって初めて実現できます。 対応する製品形態も構築しています。Qoder チームが最近リリースした QoderWake は、個人のマシン上で Agent を実行し、バグ特定、バグ修正、最終テストを担当する Agent がコンテキストを共有して協調します。これはデジタル従業員の初期形態です。

AsiaInfo におけるデジタル従業員の実測値

デリバリーを語るとき、数字は避けられません。私たちは常にソフトウェアエンジニアリングプロジェクトとして研究開発を測定してきました。AI 導入後に追加したのは、「デジタル従業員の貢献」という1つの軸だけです。 ● カバレッジ:BSS システムが最も高く、決定論的制約が強い OSS はやや低いものの、全体で約80%です。 ● アクティビティ:ある大手通信事業者を担当するチームでは、登録エンジニアが1,000人を超え、月間アクティブ率は継続的に90%以上です。 ● コード単位の効率:エンジニア1人当たりのコード出力が約14.6%向上しました。 ● エンドツーエンドの効率:要件からテストまでのパイプライン全体で、平均8.6%向上しました。 派手な数字ではありませんが、実測値です。そして1パーセントの改善でも、イノベーションへ振り向けられる人員を大きく増やします。これが AI 導入の本当の価値です。

同業者への3つの提案

企業で AI 導入を検討している場合、次の3点を提案します。 ● 第一に、モデル選択が上限を決めます。基盤モデルが土台です。継続的な投資がなければ、長く前進できません。 ● 第二に、Agent を新入社員のように管理します。単に「ツールをインストールする」のではなく、役割を与え、環境を整え、境界を定義し、評価を実行する必要があります。 ● 第三に、データでフライホイールを動かします。データがなければ、次世代モデルが登場した際に、ワークフローのどこを適応させるべきか判断できません。

結び:AI 時代の研究開発は新しいパートナーシップ

Steve Jobs の言葉に、「Technology Alone Is Not Enough」というものがあります。 AI Coding は、人間を反復作業から解放し、より美意識と創造性を必要とする仕事へ集中させる機会を与えます。 これからの協働相手は、炭素ベースの同僚だけではありません。共に進化するデジタルパートナーの集団も加わります。 力を合わせれば、より多くを実現できます。
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